2021-01-01から1年間の記事一覧

なぞがたのしい

カウンセリングでは、ひとりのクライエントに、ものすごく深くかかわる。 深くかかわるために、クライエントのこれまでの育ちを聞いたり、あるいは、心理テストをしたり、またあるいは、クライエントの家族の育ちなんかまで聞いたりする。 そうして、そのク…

個別的な物語の時代へ

生活するために必要なものの大半が、100円で手に入る時代。 世の中には物が溢れている。 それでも日々、大量生産で物が作られ、それらの物は安価で取引される。 高級品と100円ショップに並ぶ品、機能はほとんど変わらない。 職人が国産の桜の木を削り…

「変」を認める平和の園

生まれつきコミュニケーションが苦手であったり、こだわりがあったり、衝動性や不注意があったりすると、周りから、発達障害と呼ばれたりする。 コミュニケーションが苦手でも、こだわりがあっても、衝動性や不注意があっても、日常生活に困りがなければ、本…

なにかをはじめるということ

『なにか』をはじめるということ 私たちはいつも、新しく『なにか』をはじめる。 その新しくはじめた『なにか』は、継続されることもあれば、継続されないこともある。 その新しくはじめた『なにか』が継続されなかったとき、その原因は個人の意識の力に還元…

探索活動がしたい

愛着理論において、赤ちゃんは、重要な養育者(多くは母親であるため、以下では「母親」とする)を安心の基地として、探索活動をすると言われている。 外の世界は、自分が知らないことがたくさんある世界。 すごくワクワクするし、好奇心が満たされる世界。 …

論を届ける

バランスをとるということ バランスをとるという結論を出すのは、ある意味イージーである。 何か2つの軸があったときに、「両方大事」「バランスが大事」と言うのはイージーなことである。 たとえば、「子どもは褒めて育てるのが大切」という論と、「子ども…

子が育つということ

子が育つということについて考えることがある。子どもは未熟な存在だろうか。子どもは大人が躾けないと育たない存在だろうか。大人が方向づける子どもは大人と比べると経験が少ない。経験が少ないから、知らないことも多いだろう。 知らずに誰かのことを傷つ…

LGBTを取り巻く現状と課題〜マジョリティのためのLGBTの説明書③〜

セクシャルマイノリティをとりまく状況LGBTという言葉は市民権を得てきている。ただ、LGBTが何の略かということまで知っている人となると、ほとんどいないというのが現状ではないだろうか。また、LGBTという言葉が浸透したことのメリットは計り知れないが、…

三太くんの箱庭療法〜「普通」の人のための箱庭療法の説明書【事例編】⑦〜

前回まで3回シリーズで不二子さんとの箱庭療法のやりとりを紹介した。今回からまた、3回シリーズで、別の事例を紹介したい。今回紹介するのは、三太くんとの箱庭を通したやりとりである。三太くんは小学3年生の男の子。「普通」の人のための箱庭療法の説…

石みたいに

何者でもないことがバレたくないから、つまらない人間であることがバレたくないから、見せかけの個性で蓋をして、そこに膜を張って、なんとか生きている人がいる。 しかし、そうやって生きているうちに、見せかけの個性という1枚の膜では、不安になってくる…

100円均一セラピー

あるセラピーの技法を紹介するときのキャッチコピーとして、『実際に効果があったセラピーに共通する、いくつかの要因を抽出して組み合わせた技法』という謳い文句を目にすることが増えた。そんなキャッチコピーを目にするたびに、なんだか腑に落ちないよう…

波長

人と人は、例外なく、相互に作用しあうものだと仮定します。そう仮定すると、自分が誰かに心を揺さぶられた時には、その誰かも同時に自分に心を揺さぶられているはずだと考えることができます。 人間は、どの程度共鳴したり、共感したりできるのか、というこ…

しっくりくるワタシ

しっくりくるということ「私は、自分の思いを言葉で表現することができる。」「私は、自分が思うように身体を動かすことができる。」「私は、自分に似合う服を選ぶことができる。」それは、しっくりきている状態。自分が表現したことに対し、自分でそれがし…

表現するために許す

自分の頭の中にあるものを、何らかの形で外側に表現する。自分の頭の中にあったものと、何らかの形で外側に表現したものは、イコールではない。もし仮に、頭の中にあるものをそのまま表現できたとして、それは単なるごちゃごちゃしたよくわからない、まとま…

LGBTの基礎知識〜マジョリティのためのLGBTの説明書②〜

LGBTの人って、どれくらいいるの?LGBTは総人口の8〜10%前後いると言われている。ただ、調査によっては1.6%という結果が出ているものもあり、そこにはばらつきがある。そこにばらつきがあるということもLGBTのひとつの特徴であろう。たとえ無記名のアンケー…

はじめに〜マジョリティのためのLGBTの説明書①〜

はじめにセクシャルマイノリティと呼ばれる人たちがいる。性の問題に限らず、基本的にマジョリティに属する人は、マイノリティのことについて無関心になりやすい。きっとそれは、意識的に無関心になろうとしているのではない。日々、様々な目の前の課題に取…

(予告)マジョリティのためのLGBTの説明書

新連載マガジンLGBTという言葉が市民権を得て久しい。LGBTに関する書籍も書店に山のように並んでいるし、LGBTを特集する番組も少なくない。ここでは、テレビで特集されるよりももう少し詳しくLGBTについて取り上げたい。そして、LGBTの人たちに提供される治…

社会が不用と判断するものを掬い取るカウンセリング

社会の流れに沿うように、心理療法やカウンセリングの世界でも、エビデンスや目に見える結果が求められるようになっている。心理療法だったりカウンセリングの世界というのは、有象無象が混在しているという現状がある。そのような現状をふまえて、自分たち…

子どもたちの問題行動をどう捉えるかという話

私は基本的には、問題行動を起こしたくて起こしている子どもはいないと思っている。子どもたちの問題行動は、子どもたちのこころと環境との間、あるいは子どもたちのこころと考えの間に、何らかのひずみが生まれた時に起こるものだと思っている。こころと身…

不二子さんの箱庭から考えたこと〜「普通」の人のための箱庭療法の説明書【事例編】⑥〜

来談の経緯不二子さん(仮名)20代女性 小学校教諭相談室で、ある場面緘黙の子どものセラピーをしていた。不二子さんはその子の担任の先生であった。不二子さんは、何度か子どもと保護者の付き添いで相談室に来ていたが、相談室にある箱庭のミニチュアを見…

行動の問題を起こす発達障害の子どもたちと

発達障害の子どものカウンセリングをすることが多い。ただ、発達障害の特徴についての相談でカウンセリングにつながってくる子はほとんどいない。皆、何かしら行動の問題を起こして、その行動の問題の改善を求めて、カウンセリングにつながってくるのである…

臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション12

#13~#14 それぞれの道へ、それぞれが療育と関わりながらA事業所に残るスタッフと、新たな場所に移り療育を始めるスタッフ、そして新たにA事業所に雇われたスタッフが混在する中でのコンサルテーション。#13と#14のセッションでは、A事業所がど…

病院の中での臨床心理士の役割

病院で働く臨床心理士には、全体を見る視野の広さが必要である。全体というのは、病院全体でもあるし、社会全体でもある。精神科医の岡野憲一郎氏は、今後期待される心理士の役割として、今後、精神科病院の中での司令塔的な役割を挙げていた。現在の精神科…

心理療法におけるアセスメントについて

アセスメント(英: assessment): 評価・査定・分析 利用者に関する情報を収集・分析し、自立した日常生活を営むために解決すべき課題を把握すること。 (wikipediaより)治療を行う際に欠かせないのがアセスメントである。患者の状態を把握し、課題を見出し…

臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション11

#12 ブレークスルー〜急な知らせ次回の事例検討会のやり方について、児童発達支援管理者の先生から相談があった。自分たちにとって、『療育とは何か』を振り返るセッションを一度設けたいというのである。筆者としては、前回のセッションの中で事業所のス…

仕事ができるということ、仕事ができないということ

「仕事ができる人」と「仕事ができない人」がいる。ただ、仕事ができるかできないかということは相対的なものである。だから、自分が所属する集団や、ともに仕事をする相手によって、同じように仕事をしていても、「仕事ができる」という評価を受けることも…

臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション10

#10~#11「枠を越える~コンサルタントが現場に入る」そんな中、10回目の事例検討会の中で、「コンサルタント(筆者)が支援をしているところを実際に見たい」という要望が上がる。基本的なコンサルテーションのスタンスとしては、スタッフへの間接…

恋人像

少し前、とあるラジオで、「自分の恋人を、母親、姉、妹のいずれの人物として見る傾向にあるか」という話をされていました。誰かと出会って、 「この人と付き合いたい」と思う。それは、自分の恋人像に相手を当てはめているのだと考えることができます。花子…

臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション9

【対象児】 小学校2年生の男児。ASDとADHDの診断あり。コンサータ服用中。【事業所が困っている対象児の行動】 奇声をあげたり、大声を出す #7~#9「さらなる主体性の広がり~困りの顕在化」この時から、スタッフが自分たちで考えて動き始めることが増…

主体的な受け身

仕事は一人ではできない。ほとんどすべての人が、誰かの助けを借りながら、時には自分が誰かを助けながら、仕事をしている。助けたり、助けられたりする関係の中で、金銭が発生することもあれば、そうではないこともある。そう考えると、助けたり、助けられ…