感じていることを感じられるようになること

感じていることを感じられるようになること

クライエント中心療法のロジャーズの弟子で、アメリカの臨床心理学者のジェンドリンは、「今ここで感じていることに意識を向けられるようになること、そしてそれを言葉にすること」の大切さを提唱した。

彼はそれをexperiencingと呼んだ。

カウンセリングがうまく展開するか、それとも停滞するかということを予測する基準としても、このexperiencingの要素が関わってくるのだという。

うまく展開しているカウンセリングでは、クライエントのexperiencingが促進されていて、停滞しているカウンセリングでは、クライエントのexperiencingが滞っている。

では、このexperiencingを促進させるようなやりとりを行えばいいということになるのだけれど、それが簡単なことではない。

ジェンドリンと同じく、ロジャーズの弟子である心理学者キースラーは、「experiencingを促進できるクライエントは、たとえカウンセラーがポンコツだろうが、カウンセリングの初期段階から、experiencingを促進していくことができる」としている。

それは、カウンセリングが成功するか否かはカウンセリングを始める前から決まっていて、それはクライエントの個々の能力に左右されるという救いのない結論のようにも思える。

問題となるのは、experiencingが促進できないクライエントに対して、どのような関わりをするかということであり、ジェンドリンもexperiencingを促進させるような、さまざまな技法を考えたようではある。

しかし、どの技法も、クライエントの元々持っている素質をひっくり返すほどのインパクトを持ったものではなかった。

カウンセリングによって、experiencingが滞っている人を改善させるというのは難しいのかもしれないけれど、experiencingという考え方は、私たちがよりよく生きるためのヒントになるようにも思う。

今自分が感じていることがうまく感じられなくなった時に、さまざまな身体症状として現れてくる。

今自分が感じていることを無視して、感じないようにする。

感覚としては限界を感じ、ヘルプを出しているにも関わらず、それが無視し続けられると、今度は頭痛や腹痛、倦怠感、不眠、気力の減退などの身体症状に変換して、身体からメッセージが発信される。

そして、強制的に心身を休ませにかかる。

このようなサイクルで、強制的に休まされて、また回復して、という流れでも悪くはないのかもしれないけれど、急に休まなければいけなくなったり、回復までのコストもかかったりするので、できればその前に感じていることに気づいて、自分でセルフケアをしたり、休養をとったりする方が良いような気もする。

自分が今感じていることをしっかり感じられるように、ジェンドリンの言うexperiencingを促進できるように、少し意識してみようと思う。

今、どんな感じを感じているだろう。

少し、頭の中はガチャガチャっとしているような感じで、胸のあたりはもこもこっと綿が詰まっているような感じがします。

嫌な感じではないです。

言葉にすると、少し感じとズレるような感覚もあるけれど、スッキリ収まるような感覚もあって、悪くないようにも思える。

今感じている感じを尋ねた時、「うーん・・・ポルポル!」と表現したタカシくんも、そんな感覚を持っていてくれてたらいいなあと思う。