豊かに生きることを支えるカウンセリング

子どものことを相談する親がいる。これまで、相談機関なんていうものにはまったく縁がなかったにも関わらず、子どものことで園や学校の先生から相談機関にいくことを勧められて、生まれて初めて専門家への相談という門をくぐる。そこで、子どもの対応につい…

物語として「説明」する

多くの科学は、出来事の理由を説明することが得意である。たとえば、「こういうことが起こったのは、このような理由からです」という説明するのは得意である。しかし一方で、では次に何が起こるのか、いつそれが起こるのかを予言するのは不得意である。地震…

不登校のこどもとその親たちへ

不登校のこどもとその親たちへいろんな偶然が重なり、不登校のこどもとその親たちを支援する事業を立ち上げることになった。これまでも不登校のこどものセラピーはやってきたし、不登校のこどもの親御さんの相談にも乗ってきた。けれど、予算がつくような事…

感じていることを感じられるようになること

感じていることを感じられるようになることクライエント中心療法のロジャーズの弟子で、アメリカの臨床心理学者のジェンドリンは、「今ここで感じていることに意識を向けられるようになること、そしてそれを言葉にすること」の大切さを提唱した。彼はそれをe…

多様な人の多様なゴール

自分が「勝ち組ではない」と受け入れること人類が生き残る上での戦略として、集団の中に多様な人間が存在していることは重要だという説がある。例えば、ある遺伝子を攻撃するウイルスが流行したとする。 同じ遺伝子を持つ人間のみで構成された集団であれば、…

良くないことの意味

話を聞くことで はじめはよくわからなかったものが なんとなくわかってくる。あるいは わからないこと自体が あまり気にならなくなってくる。そんな状態の時は、 目の前のクライエントに、 真摯に向き合えていると感じる。「クライエントのことがよくわから…

役に立たない「他との違い」

個性的になればなるほど、「社会」との距離は開いていく。「他と違う」ということは、「希少性が高い」ということであるから、社会的な価値を高めるということが言われたりするけれど、それはその「他と違う」ことが、社会的に役に立つと判断された場合に限…

なんとかしようと思わない

あたりまえのことだけれど、 「自分の力でどうにかできるかもしれない」と思うとき、 人はどうにかしようとする。「自分の力ではどうにもならない」と思うとき、 人はどうにかしようとはしない。「悩み」には、どうにかできる悩みと、どうにもならない悩みが…

元気にするというシンプルな軸

元気がない人を、元気にすることがカウンセリングの目的であるという考え方。自分が表現したことを、他者に認められることで、精神的エネルギーは充足する。だから、カウンセリングでは、クライエントに表現をさせ、カウンセラーはそれを認める。カウンセリ…

「見つけてほしい」から「隠す」

「隠す」ということ「隠す」ということについて考えてみたい。こどもとの臨床をしていると、「隠す」ということがテーマになることが多い。けれど、「隠す」というのは一体どういうことなのだろう。改めて「隠す」ということについて考えてみたいと思うよう…

生きることとネガティブ・ケイパビリティ

ネガティブ・ケイパビリティネガティブ・ケイパビリティ、それは、事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、疑惑の中にいられることです。 John Keats(詩人)事実や理由、パフォーマンス、エビデンス、そんなことが求められる社会で、ネガティブ…

心で心を思う

自己心理学のハインツ・コフートは、生まれたばかりの赤ちゃんに「自我」は備わっていないけれど、養育者が赤ちゃんを「自我」を備えた存在とみなしてかかわることで、赤ちゃんの「自我」は育つと言った。生まれたばかりの赤ちゃんに「こうしてほしい」とい…

主体性を奪う質問

2種類の質問質問には2種類ある。 質問者が答えを想定している質問と、そうでない質問である。誘導のための質問質問者が答えを想定している質問は、誘導のための質問である。誘導や洗脳などに用いられる質問は、質問というかたちをとってはいるけれど、それ…

間に挟まりながら

同調圧力と競争圧力社会には、同調圧力と競争圧力が存在する。同調圧力みんないっしょ。 みんななかよく。 出る杭は打たれる。 私たちは、このような言葉によって圧力をかけられながら生きている。 つまり、同調圧力の中で私たちは生きている。競争圧力一方…

こどもの心を見る

こどもへの対応方法として、 「一貫した対応をしなさい」 というのはよく耳にする話である。一貫した対応とは、どういう対応だろう。よく言われるのは、 その時々で、親がこどもの行動を許したり許さなかったりすると、 こどもが混乱してしまうということで…

ADHDとHSPの不安

不安を感じた時、その不安をどのように収めるかにその人の個性があらわれる。 ある人は、他者に話を聞いてもらうことで不安を収めるかもしれない。またある人は、部屋に閉じこもって好きな音楽を聴くことで不安を収めるかもしれない。またある人は、不安を収…

発達障害のこどもが大人になったら

ずっと、自分が「普通」でないと感じてきました。そんな声を聞くことは多い。そのように感じてきた人たちすべてが、発達障害であるわけはないけれど、発達障害のこどもたちが思春期に入ったとき、「なんか自分はみんなと違う」と感じる子は多い。大人になっ…

できなくても楽しいこと

親は、どんなことを喜ぶだろう。 たとえば、こどもがなにかできるようになったことを、親は喜ぶ。だけど、できるようになったことばかりに親が注目すると、こどもは親のプレッシャーによって、純粋に好きなことを楽しめなくなるかもしれない。「できる」か「…

問題を見つけない

心理士は、問題を見つけるのが得意である。ある訴えがあって、相談者が相談に訪れるとする。心理士は、いろいろと検査をしたりして、その訴えの原因を突き止める。けれど、ある訴えの原因がひとつだけ、なんてことはなく、ほとんど例外なく、複数の要因が絡…

自律性を高める子育て

自律的であること「こどもを自律させることが大事である」 というメッセージを目にすることが増えた。子どもを自律させるとはどういうことだろう。Noom(1999)は、自律的であることを以下のように定義している。・目標を定めることができる能力 ・自分自身…

親子で箱庭をつくるということ

はじめに私は、こどもやその親へのカウンセリングをメインの仕事としている。 こどもとのセラピーに箱庭を使うことがあり、こどもが誘ってくるときには私も一緒に箱庭をつくることがある。改めて説明すると、箱庭療法とは、砂の入った箱の中に、ミニチュア玩…

親のどのようなかかわりが、子どもを「ちゃんとした大人」にするのか

「子どもに悪い道に進んでほしくない」 というのは、ほとんどの親が思うことだろう。子どもをひどく虐待する親であっても、 「子どもにちゃんとした大人になってほしいから」 という理由を述べる者が多い。虐待親に関しては、 それが本当か、単なる責任逃れ…

抽象化しない

抽象化すればするほど、 自分が指し示そうとする「それ」と 他者がイメージする「それ」はズレやすくなる。気を抜いていると、 どんどん抽象化していく。自分がわかっていることは、 相手もわかっていることだろうと、 そのように思い込み、 抽象化された発…

狭間に在ることに耐えうる力

家族療法という心理療法心理療法の一つに、家族療法というものがある。家族療法では、 問題は家族というシステムの中で起こっていることと捉える。その問題は、システムの中で 必要とされているから維持されているのであり、 システムがそれを必要としなけれ…

カウンセリングは問題解決ではない

カウンセリングの目的は問題解決ではないカウンセリングの目的を、問題解決と誤解している人は多い。カウンセリングの目的は問題解決ではない。カウンセリングの目的は、 クライエントが主体的に生きられるようにすることである。「カウンセラーに問題解決し…

捉えるというだけ

「意識」と「無意識」がある。心理士の中にも、 「意識」を重視する人と、 「無意識」を重視する人がいる。「意識」を重視する人と、 「無意識」を重視する人との間には、 対立が起こりやすい。初学者においても、 知らないうちに、 その論争に巻き込まれて…

くっつくこと

赤ちゃんは、恐れを感じると、 養育者(多くは母親)にくっつく。 養育者にくっつくことで、安心を得る。 これは人間以外の動物にも備わっている機能で、 アタッチメント(愛着)という概念で 説明されている。恐れを感じたときに 養育者にくっつくという機…

ASDの診断がつかない子ども

ASDの特徴があっても、診断がつかない子がいる。 ASD(自閉スペクトラム症) の特徴は2つ。①空気が読めない (コミュニケーションの問題)②興味の偏りやこだわりがある しかし、ASDの特徴があるだけでは、医学的な診断はつかない。 児童精神科や発達小児科…

ADHDの子どもたちと

ADHDの特徴は3つ。①絶えず動き回っている②考える前に行動する③うっかりしている ADHDの子は、多くのエネルギーを持っている。いろんなことにチャレンジする行動力を持っている。 そして、人と関わることが好きな子が多い。リーダーシップを発揮することも多…

LGBTの治療〜マジョリティのためのLGBTの説明書④〜

LGBTの説明書LGBTについてのマガジンを書きたいと思い立ち、書き始めたのは良いけれど、12月ごろに中断してしまい、もう4ヶ月ほど経つ。なぜ中断したかはあまり覚えていないのだけれど、中断したのは事実であって、何らかのことがあったのかもしれない。 LGB…